課題とビジョン

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『洲本市・炬口地区 集落再生ビジョン』
Visions for the sustainability of Takenokuchi community

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本ビジョンは、洲本市・炬口地区を対象に、地域への誇りを持って住み継ぐことのできる集落を目指して、地域の将来像・目標を描き、実現に向けた具体策を提案するものです。
住民の方々はもとより、地方移住をお考えの方々や都市に住まわれる方々にも関心を寄せていただき、本集落のコミュニティや文化といった貴重な資産を再発見し、それらを守り伝える取組につなげたいと願います。

『洲本市・炬口地区 集落再生ビジョン』は、国土交通省「空き家対策の担い手強化・連携モデル事業」の助成を受け、「洲本市炬口地区まちづくり支援活動団体」が作成を進めました。

洲本市炬口地区の位置
洲本市炬口地区の位置
炬口地区と洲本市街地との関係
炬口地区と洲本市街地との関係

炬口地区の現状と課題

① 人口の現状(数値は国勢調査による炬口1 丁目、炬口2 丁目、塩屋3 丁目の合計)

  • 2015年の人口は777 人、世帯数、世帯人員とも一貫して減少傾向です。洲本市全体も減少傾向ですが、炬口地区はより大きく減少しつつあります。
  • 年代別は65 歳以上の高齢者の比率が約39%、洲本市全体の約33%より高い数値です。75 歳以上の比率が増加し続け、高齢化が顕著に進行しています。
    集落が持続できるよう、新たな担い手を見出すことが必要です。
人口・世帯数・世帯人員の推移

年代別構成比の推移

② 空き家をめぐる状況

  • 地区内には空き家が約70、空き地が約30 存在します(2019 年時点)
  • アンケート調査では、空き家所有者の約5割が空き家を子どもに託したいと回答しました。一方、相続予定者の約6割が実家を活用したいと回答しました。
    故郷の実家の有効な活用策を考えていくことが必要です。

③ 炬口地区の評価

  • 関西圏の都市居住者へのアンケート調査では、炬口地区の「自然」「特産品や食」に対して評価が高い結果となりました。
  • アンケート調査では、空き家所有者の約5割が空き家を子どもに託したいと回答しました。一方、相続予定者の約6割が実家を活用したいと回答しました。
    自然や特産品・食を生かして「関係人口」の拡大を目指していくことが効果的です。
実家の活用意向(相続予定者)
都市居住者による炬口集落の評価

再生の具体策1
「安心・安全な暮らしを守る」

① 「危ない」と「安全」の見える化を進める

ハザードマップによると、炬口地区は南海トラフ巨大地震の発生に伴う津波の襲来時に、「1.0m 以上2.0m 未満」の浸水高が予測される区域が多くを占めます。
津波の襲来時には、避難所または高台への避難が必要となりますが、炬口地区には細街路が多いことから、避難に支障を生じることが想定されます。消防活動も道路の整備された地域より難しいことが予測されます。
こういった課題に対応し、災害発生時に安全を確保できるよう、日頃からの備えが必要です。そこで、共同作業を通じて、住民どうしが情報を共有、お互いに助け合うきっかけとなる「逃げ地図」づくりが有効です。
「逃げ地図」は、近くの高台など避難目標地点までの避難経路と、避難にかかる時間を示すものです。どこをどう通れば最短時間で避難地点にたどり着くかが、一目でわかります。
また、住民の皆さんが、今ある空き地を活用するための計画づくりに取り組むことを提案します。そのために、再生後の空間イメージを共有できるよう、コンピュータグラフィックス(CG)を作成しました。皆さんがこのCG を活用することを支援チームは願います。

「逃げ地図」づくりのワークショップ風景
「逃げ地図」づくりのワークショップ風景
集落のコンピュータグラフィックス(CG)
集落のコンピュータグラフィックス(CG)

② 地区内に残る路地をふさわしい形に整えていく

集落内に多く残る路地は、優れた景観を形成することから、地域の社会的共通資本として継承されることを提案します。

テーマ1 路地の魅力を見直す

車の通行のない路地は、高齢者の方々や子どもたちにとって、安全な空間です。路地を介して各戸から日常生活の「気配」が伝わることから、住民の方々の安心につながります。車社会のまちづくりを見直し、路地の魅力を生かしていくことは今後のまちづくりの先取りにつながります。

テーマ2 路地と建築基準法

建築基準法では、建築物の敷地は幅員4m 以上の道路に2m以上接することが求められています。一方、一定の条件を満たせば道路を幅員4mまで広げることなく新築や増築を可能にする制度もあります。また、増築を伴わない空き家の改修は、現状でも可能です。

テーマ3 路地の再整備

空き地を菜園や駐車場、消防活動空地等に活用することにより、通風や日照も確保できます。路地を景観の面から見直すことも大切で、無機質なコンクリートブロック塀よりも、板塀や生垣の方が炬口の路地の風景に似合います。

炬口地区の路地風景
炬口地区の路地風景
路地の再整備後のイメージ
路地の再整備後のイメージ

再生の具体策2
「空き家をなくし賑わいを守る」

① 空き家問題を知る

  • 2020 年9 月に炬口地区を対象とした『空き家を活用するしおり』が完成しました。その中の「空き家にするときの心得」を住民どうしで共有することから始めましょう。
  • 自宅を空き家にせざるを得ない場合、住民会に依頼して見守ってもらうこと、空き家を活用したい人への情報提供に努めましょう。

② 都市に住む子世代へ情報を発信する

  • 炬口で育ち、都市に住む子世代を対象としたアンケート調査を2020年11月に実施(回答数約50)、6 割以上の方々が「炬口を大切にしたい」「実家を活用したい」と回答しました。
  • 炬口地区の魅力を広く発信し、関心を持つ人を増やすことが空き家を少なくすることにつながります。

③ 集落に残る伝統的民家を活用する

  • 2020 年12 月にヘリテージ淡路と共同で集落内に残る伝統的民家の調査を進めた結果、358 棟のうち約3 割に当たる107 棟の伝統的民家が残存することがわかりました。
  • 炬口地区の伝統的民家は、「本瓦葺」「左官壁」等の特徴を持ち、貴重な文化資産として大切に継承すべきものです。
子世代へのアンケート結果

集落内の伝統的民家
集落内の伝統的民家

④ 実家を活用するライフスタイルを実践する

  • 都市に住む子世代を対象としたアンケート調査では、実家を「友人、知人の宿泊拠点にしたい」とする回答が多く見られました。
  • 友人や知人に出資を募り、実家の改修費や維持管理費を捻出し、共同で活用していく方法があります。
  • 移住や二拠点居住に向けた行政の支援制度は現在充実しつつあり、それらを活用する方法もあります。

⑤ 空き家活用に当たり多様な用途を目指す

  • コロナ禍により普及が進んだリモートワークの拡大が今後も想定されます。地方への関心が生まれ、淡路島も企業の本拠地の移転先として注目を集めています。
  • 住宅用途に限らず、宿泊体験施設やリモートワークが可能なレンタルオフィスとして空き家を活用する需要も生まれています。
  • 飲食や入浴、食料・日用品販売などのサービスの需要が高まれば、住民の方々にとって便利な施設が増えることにつながります。
  • 住民の方々が日常的な交流拠点として空き家を活用することも考えられます。移動販売車の販売スペースとして兼用すれば、買い物といっしょにおしゃべりも楽しめます。
築70 年の民家を改修したシェアオフィス
築70 年の民家を改修したシェアオフィス

移動販売車での日用品の販売風景
移動販売車での日用品の販売風景

再生の具体策3
「炬口固有の自然と文化を守る」

① 情報発信の仕組みをつくる

地域の魅力や文化を伝え、集落の高齢化や空き家の増加等の課題を共有し、課題解決に向けた具体的な取組を紹介するため、WEBサイトの立ち上げを進め、2021 年1 月より公開を開始しました。
WEB サイトは、地域の情報だけでなく、人と人とのつながりから生まれた提案等を集めた上で発信し、新たな取組が生まれる母体として制作しました。

② 行政や民間支援活動グループと連携する

WEB サイトの制作に当たり、現地での取材や地域住民の方々へのインタビュー等を通じて、地域の方々を巻き込むネットワークづくりを意識しました。今回の取組全体の中で広がった関係者のつながりは、生きたプラットフォーム、つまり集落再生に向けたきっかけとしての役割を担なっていくことを期待します。

③ 集落の魅力を見直す

炬口地区は、京阪神からのアクセスに恵まれ、洲本市街地にも近い上、海や里山の自然が身近にあります。山城址や八幡神社の文化財や祭礼、伝統的民家と路地、そして淡路島の食材は都市住民から魅力的であるとの評価を受けています。

2021年1月から公開を開始したWEBサイト
2021年1月から公開を開始したWEBサイト

炬口八幡神社の祭礼
炬口八幡神社の祭礼