淡路島には三原地区(南あわじ市)を中心に、江戸時代の初期から昭和の初めまで、人形芝居を演じる大小様々な人形座がありました。淡路島の人形芝居は、漁業に関わりの深い戎信仰を全国に広めた傀儡師(くぐつ)たちの人形あやつりが起源と言われています。このため炬口でも大漁祈願のために人形座に依頼し浜芝居をおこなっていました。おそらく夏の大漁祭などにあわせておこなわれたと考えられます。炬口では浜に人形芝居を上演する小屋が設置されました。小屋と言っても仮設的なもので、観客席は砂浜の上にむしろやゴザを敷くだけの簡単なものでしたが、砂浜は、土の地面とちがって長時間座っていてもお尻に水がしみてくることがなかったので芝居見物には最適でした。当時は娯楽が少なかったので、人形芝居が来ると、重箱いっぱいに食べるものを用意して一日中芝居を見て過ごすのを楽しみにしている人も多かったようです。